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September 15, 2007

「シッコ」−民営化信仰に対する警告 

 マイケル・ムーア監督の「シッコ」をみて、日本に公的な健康保険があって本当に良かったと思った。小泉元首相が郵政民営化ではなく、健康保険民営化をしていたら、日本人もこの映画のように過酷な状況に陥っていただろう。テレビで外資系保険会社が大量にCMを流し、厚労省が混合診療解禁を検討していることを考えれば、健康保険民営化も十分ありえる話である。早くも産科医療は崩壊寸前なので、これを口実に医療の民営化を一気に進めるというのも一つのシナリオとしてありえるだろう。

 アメリカの悲惨な医療事情と比較する形で、カナダ、イギリス、フランス、キューバの現状が紹介される。キューバは共産国なので比較するには少し無理があるが、隣国のカナダで国民皆保険が機能していて、アメリカでは無理というのは理屈が通らない。アメリカの国民皆保険反対派は、皆保険は社会主義的だから良くないという。それならば、アメリカ以外の先進国はすべて社会主義国家ということになってしまう。まったく理屈が通っていないのだが、そんな屁理屈が通ってしまうのがアメリカらしいところである。

 「シッコ」はこれまでのムーア監督の作品と比べると、価値中立的で説得力がある。医療は政治に左右されてはならない。資本主義社会であるか共産主義社会であるかを問わず、保守政権であるかリベラル政権であるかを問わず、人は健康に暮らす権利があり、政府は医療に力を入れるべきであって、政治を利用して人の命を金儲けの道具にすべきではない。そのように考えれば、この映画は政治的な映画ではないといえる。

 病院が入院費を払えない患者を道に捨てるシーンなど、涙が出てくるシーンもあり、これまでのムーア作品とは一線を画している。

 近年の日本人は、民営化すれば何でもうまくいくという民営化信仰が篤いので、「シッコ」は日本人に対する警告の映画でもある。

シッコ公式サイト
マイケル・ムーア最新作『シッコ』公開前から大評判(暗いニュースリンク)

August 05, 2006

「ランド・オブ・プレンティ」−滑稽なまでに哀れなアメリカ

 ドイツ人の映画監督であるヴィム・ヴェンダースの「ランド・オブ・プレンティ」を見た。本作もヴェンダースが得意とするロードムービーだが、非常に政治的な映画だったので、興味深かった。

 9・11以後、アメリカ批判の映画としては、マイケル・ムーアの「華氏911」がとても話題になった。それに対して、本作は有名な監督の作品にもかかわらず、ほとんど話題にならなかった。
 それもそのはずで、ヴェンダースの映画全般にもいえることだが、この映画が明快さに欠けるからだろう。私は、ブッシュ政権とそれを支持するアメリカ国民に対して、強烈に批判した映画とみたが、見る人によっては、単に対テロ戦争を行うアメリカ人に対して同情した映画と捉えるかもしれず、見る人によって、受け取り方がかなり変わりそうだ。

 9・11以後、盛んにいわれていることだが、地方に住んでいるアメリカ人は無知で保守的な考えの人が多い。主人公はその典型のような人物で、さらにベトナム戦争の帰還兵である。
 この主人公に会いに、外国から姪がやってくる。宣教師の親をもち、アフリカやパレスチナで暮らしていた。パソコンを使いこなし、国際情勢にも明るい彼女は、主人公の伯父と対照的である。
 偏執狂的にテロリストを追い続ける伯父と、それを暖かく見守りながらも、伯父の目を覚ませようとする姪。

 この伯父と姪の関係は水と油のような関係なので、普通は衝突してしまう。そうならないところが、この映画の明快さに欠けるところであり、面白いところでもある。
 姪の伯父に対する暖かい眼差しが印象的で、ヴェンダースの哀れなアメリカ人に対する暖かい眼差しを表しているように思えた。

 この映画では、マスコミの好戦的な報道がよく流れた。さりげなく流れるので、うっかりしていると気にとめないかもしれない。
 アメリカで蔓延している、偏向報道と情報不足という問題である。ニューヨーク・タイムズを読んでいるような人は一握りで、FOXニュースをみるだけのような人が多数をしめる実態がある。
 7月、イスラエルがレバノンに攻撃を開始してから、戦争が続いている。CNNによると、アメリカ人は攻め込まれているレバノンよりも攻め込んだイスラエルに同情する人がほとんどという調査結果が出た。この調査結果は、アメリカにおける、偏向報道と情報不足の典型的な例といえよう。

 この問題はアメリカで顕著にみられるといっても、アメリカだけの問題ではない。日本でもNHKニュースは、もはや中立には程遠く、民放以上にバイアスがかかっているし、今に始まったことではないが、読売新聞は保守的といえばバランスがよさそうだが、親米、親イスラエル、反中国の記事ばかりで、相当に偏向している。残念ながら、バランスは相当悪いし、案外情報量も少ない。
 インターネット時代になって、情報は得ようとすればいくらでも得られるが、良質の情報を得るということは案外難しい。

 アメリカで起きていることは対岸の火事ではない。このようなアメリカを模範にした改革を行うことは、格差社会を生みだすことになり、一握りの人のためにしかならない。

 日本は、この映画の姪の役割を演じるべきであって、ただ命令を受けるだけの、伯父(アメリカ)の部下になるべきではない。

ランド・オブ・プレンティ(公式サイト)
ヴィム・ヴェンダースインタビュー(pause)
米国民68%がイスラエルに同情、ヒズボラ6%(CNN)

関連バックナンバー
「華氏911」でブッシュ政権の異常さを再確認

December 19, 2004

「グッバイ、レーニン!」

 先日、近くの映画館で「グッバイ、レーニン!」が偶然上映されていたので、見に行った。ドイツ本国では話題になった映画だが、日本ではそれほど知られていない映画だと思う。
 あらすじの紹介は他のサイトに委ねるとして、ここでは簡単に感想だけ。
 母親に東ドイツが健在であると嘘をつき続ける滑稽な話であるが、観ていくうちに意外とシリアスな話であることに気づく。というのも、私は、深読みかもしれないが、次の二点を疑問に思った。
 第一に、父親が西ドイツに亡命した本当の理由を考えると、母親の社会主義への信念は本心ではなかったのではないか。
 第二に、息子の恋人ララが母親に本当のことを話して、母親はすべてを知っていたのではないか。
 この二点を考えると、東ドイツが西ドイツに勝利したという最後のビデオは、社会主義のあるべき姿を語った感動的なシーンだが、母親は東ドイツが勝利したことよりも、息子がいかに母親を思っていたかに感動したのだろう。もちろん、社会主義のあるべき姿も、歪んだ社会主義体制下の東ドイツでは、多くの国民の願望であったに違いない。

 秘密警察シュタージが暗躍し、統制経済で、非民主的だった東ドイツだが、社会主義国にも平等・雇用・福祉などで良い点があったのだろう。米国は、社会主義国家を悪の帝国と決めつけていたが、発想が単純すぎて危険だ。現在でも、社会主義国家がテロ支援国家に置き換わっただけで、この単純な発想は米国で続いている。

 この映画は、ドイツでは東西ドイツ国民の心の中に残る亀裂を克服するのに役立ったようだ。日本では旧東ドイツ人の気持ちを理解するのに役立つのではないか。その点、私は映画を見終わってから、ユーモラスさよりもシリアスさの方が心に残った。
 映画的にも良い映画だと思う。ララはかわいいし、ビデオやロケットなど感動的なシーンも多い。私はレーニン像が空輸されていくシーンが一番印象に残った。

参考
グッバイ、レーニン!(日本版公式ホームページ)
グッバイ、レーニン(欧州どまんなか)
[欧州映画紀行] No.032 グッバイ、レーニン!
ベルリンの壁崩壊15年(毎日新聞・記者の目)

September 23, 2004

「ボウリング・フォー・コロンバイン」と日本における中国人

 先日、テレビでやっていたムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」を見た。コロンバイン高校の乱射事件からアメリカの銃社会を考える映画だが、ムーア監督の突撃取材や、サウスパークのアニメを使ったエンターテイメント的要素が効果的で、何よりもマスコミが国民の不安をあおる構造を指摘していたことに考えさせられた。
 アメリカでは、黒人男性の犯罪をマスコミが取り上げる回数が多い。犯罪は実際には減少しているのに、マスコミが取り上げる回数が増えているので、あたかも黒人男性による犯罪が増えているように錯覚させ、不安をあおっている。
 これを見て思ったのは、アメリカを日本、黒人男性を中国人に変えれば、現在の日本そのものではないかということ。最近、テレビのニュースで中国人による犯罪が取り上げられない日はないといってもいいくらいだ。中国人による凶悪事件が起きたからといって、中国人を排除するのではなく、その原因を調べて、何か構造的な問題がないかどうか調べる姿勢がマスコミには必要であるのに、外国人排斥につながりかねないような報道ばかりしていないだろうか。日本にいる中国人のほとんどが善良な人であることはいうまでもない。日本では近年、犯罪が増えていると言われているが、本当にそうだろうか。少なくとも、少年犯罪が増えているというのは間違いであることは、一部では周知の事実だ。
 アメリカでのテロの恐怖は、日本では北朝鮮の脅威に置き換えられるだろう。北朝鮮のテポドンは確かに脅威だが、冷戦時代のソ連の核兵器に比べれば、子供だましのように思えてしまう。
 映画では、カナダが出てくる。カナダでは、夜でも家の鍵をかけないというのは信じられなかったが、社会保障システムがはたらいていて、スラムが見られないというのは、先進国として普通の姿だ。アメリカは先進国の中でも特異な存在であるということを認識している日本人が少なすぎると思う。銃社会はその一面にすぎず、貧富の格差が大きいということが一番大きな点であろう。このような社会にする、新自由主義による規制緩和を阻止しなければならないが、このようなことを主張すると共産主義扱いされかねないところまで、今の日本はアメリカ化してしまったといえる。
 アメリカでは保守的で好戦的なFOXニュースの影響力が増していることも大きい。先日、リベラルなCBSで不祥事があった。大統領選を前に、ますますFOXの影響力が大きくなるのかと思うと憂慮すべき事態だ。

参考
ボウリング・フォー・コロンバイン
少年法改正へ法務省方針(★J憲法&少年A★)
喪家の狗 ― 実録!在日中国人残虐犯罪(blog::TIAO)
CBS、疑惑資料の提供者とケリー陣営を接触させた疑い(ロイター通信)

September 12, 2004

「華氏911」でブッシュ政権の異常さを再確認

 マイケル・ムーアの「華氏911」を見たのが、偶然にも9月11日になった。小泉首相が映画を見る前から「偏った映画」と言ったり、ネットや読売新聞などでプロパガンダ映画という批判も多いが、見てみないことには批評できないので、私は久しぶりに映画館に足を運んでみた。
 感想は、暗いニュースリンクさんやグレッグ・パラストの本を読んでいたので、新しく知ったことはあまりなかったが、いい映画ではないかと思った。イーアクセスがカーライルの投資を受けていることを新しく知ったぐらいだ。
 アメリカ人に、大統領選でブッシュを落選させるために、民主党に投票させようとしている点はプロパガンダだが、ブッシュ氏に関する疑惑を取り上げている点はジャーナリズムの範囲ではないだろうか。アメリカではマスコミが大本営発表状態で、イラク戦争が正しく伝えられていないことを考えれば、この映画のプロパガンダは必要の範囲内だと思う。
 私が日本人で、米大統領選の選挙権がないこともあるが、プロパガンダ映画という不快感はなかった。それどころか、途中、テロ警報の場面では面白すぎて、笑わせるのはやめろ、もう少しまじめにやれと思ったほどだ。
 この映画で一番印象に残ったのは、失業中の貧しい若者がイラクに送られていくこと。アメリカでは軍需産業で国を支え、雇用を生み出している。日本は幸いにも、軍需産業ではなく建設産業なので仕事中に殺されることはないが、国土の自然がだいぶ破壊されてしまった。
 映画で、ハローワークの職員が、失業中の若者に軍隊を勧めるシーンがあった。やらせなどではなく、これが現実なのだろう。不景気の日本でも、村上龍氏の『13歳のハローワーク』に自衛隊が出てくる。
 どちらも、偽善はまったくない。しかし、私には抵抗を覚える。特に、イラク戦争のようなことに対しては、生活に困窮しても抵抗するべきではないか。日本の自衛隊も、イラク派兵している現状を考えると、今自衛隊に入隊することが何を意味するのか考える必要があるだろう。
 国際政治はアナーキーであるし、ケリー氏が大統領になれば世界が安定するとも思えない。しかし、ブッシュ政権を終わらせることは全人類にとって望ましいということだけは断言できる。その点、この映画がチャップリンの「独裁者」と似ているという町山氏の指摘は正しいと思う。
 ブッシュ政権の真実について、アメリカ人はこの映画を通して知る人が多いのかもしれないが、アメリカ以外ではそのことを再確認するだけの映画になるだろう。

参考
映画に何ができる?・・・何でもできる!(暗いニュースリンク)
華氏911と小泉首相(NOPOBLOG)
「華氏911」今、観て来た(町山智浩アメリカ日記)
「華氏911」は「チャップリンの独裁者」である(町山智浩アメリカ日記)