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April 23, 2006

イタリアの政権交代

 4月9日と10日、イタリアで行われた上下両院選挙で、プローディ元首相率いる中道左派連合「連合」が、ベルルスコーニ首相の中道右派連合「自由の家」を小差で破った。
野党陣営の勝利確定=最高裁、最終集計結果を発表−イタリア(ヤフー・時事通信)

(1)ベルルスコーニのメディアコントロール
 この総選挙では、選挙直前に与党が有利になるように選挙制度を改正したり、選挙後に負けた与党が票の数え直しを要求するなど、ベルルスコーニ首相の横暴さが目立った。ベルルスコーニ首相がコンプライアンス(法令遵守)に欠ける点では、ブッシュ大統領(国際法無視のイラク戦争、フロリダでの開票疑惑等)や小泉首相(憲法違反の靖国参拝)によく似ている。
 ベルルスコーニ首相がメディアコントロールを駆使することでは、ブレア首相や小泉首相に似ているが、ベルルスコーニ首相のより徹底している点は、メディア王として、自らテレビ局を所有していることで、所有しているテレビ局メディアセット (Canale 5, Rete 4, Italia 1)では、与党の扱いが野党の扱いの10倍の時間にのぼっているという。
プローディ、メディアセットには出演せず(イタリアに好奇心)

 テレビを利用したメディアコントロールは、選挙に負けたとはいえ、今回もある程度有効だったようで、ベルルスコーニ首相は、中道左派連合は旧共産党に操られていて増税しようとしているとテレビで繰り返し訴えることで、選挙戦後半での追い上げに成功した。具体例として、4月3日のベルルスコーニとプローディのテレビ討論で以下のようなやりとりがあった。

2006年イタリア総選挙 4月3日 ベルルスコーニ VS プローディ テレビ討論(第2回目)(やそだ総研)

ベルルスコーニは、プローディはこう言っているが、左派は全然違う考えでいる、共産主義者たちは大規模な所得再配分を計画している、とカットコムニスモ(カトリックと共産主義の混合)が増税を準備しているというイメージを聴衆に植えつけようとしました。プローディは、ややイラつきながら、自分の考えは明確であるとして、単語ごとにゆっくり言葉を分けて先の定義を繰り返しました。「これでいいですか。」これはやや押しつけがましい感じでよい印象を残さなかったと思います。ベルルスコーニは左派はやはり信用できない。中道・左派には100人以上の最左派(旧共産党系)の議員が含まれていると、左派陰謀説をさらに展開しました。

(2)二大連合と二大政党
 イタリアでは1994年の総選挙から、日本では1996年の総選挙から、小選挙区比例代表並立制に移行した(イタリアは去年、比例代表制に変えたが、それまでの並立制の要素が残っている)。
 中道左派連合の「オリーブの木」で知られているように、イタリアでは多数の政党が2つの連合に分かれて選挙を戦うことによって、政権交代を繰り返すことに成功した。。それに対して日本は、多数の政党が二大政党に収斂することによって政権交代を試みたが、10年たった今でも成功せず、自民党の一党優位政党制が続いている。多数の政党があるイタリアが政権交代していて、二大政党に近い日本が政権交代できないのは皮肉な話だ。
 私は、日本は二大政党にこだわりすぎたために、政権交代に失敗したのだと思う。政権交代のために野党が一つの政党にまとまったため、それまでの政策を放棄してしまったことに加え、まとまれなかった社民・共産が独自に戦ったため、イタリアほど徹底した選挙協力体制がとれなかった。
 小沢民主党については、これまで以上に自民党との違いがわからなくなった。仮に政権交代したところで、小沢氏の考えが大きく変わらない限り、これまでの小泉政権の新自由主義路線が継承されるのではないか。
 日本もイタリアを参考にして、二大政党から二大連合に目標を変えて、他の先進国のように、保守・リベラルという政策の違いをはっきりと打ち出すべきだ。

April 16, 2006

フランスのCPEと日本の解雇ルール

 フランスで、26歳未満の若者を2年間の試用期間中は自由に解雇できるとしたCPE(初期雇用契約)が学生等のデモで廃案になった。デモには100万人以上が参加したということで、フランス国民の政治意識の高さを見せつけられた思いがしたが、東京新聞で学習院大の野中教授が「デモが政治の仕組みとして伝統的に使われ、認められてきたフランスと日本は違うから、日本人がまねをするのは無理」と答えているように、日本で同じようなデモを起こすのは無理としても、似たような法案が国会に上がったとき、マスコミが大きく取り上げて問題にすることさえしないのが日本の現状である。それは何かといえば、2003年に日本の国会で審議された解雇ルールのことで、2003年5月、労働基準法改正を審議する衆議院厚生労働委員会では議員の空席が目立ち、傍聴席のうち記者席もほぼ空っぽであったという。有事法制が同時進行で審議されていたとはいえ、明らかにメディアは労働問題に対して無関心だった。私も、当時この問題が国会で取り上げられていることを知らなかった。

 それまで、日本には労働基準法等での部分的規制を除くと、解雇規制がなかった。あったのは判例だけで、「解雇に客観的に合理的な理由がない場合、あるいは、合理的な理由があるとしても社会常識に照らして解雇には相当しない場合、解雇権の濫用として解雇は無効になる」という解雇権濫用法理や、「人員削減の必要性・解雇回避努力・解雇対象者の選定の合理性・労働者との話し合い」が必要という整理解雇の四要件などがあった。2002年末、労働政策審議会が発表した「建議」(2003年、国会に労働基準法改正法案として提出されることになった)は次のようなものであった。

使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することができること。ただし、その解雇が、客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするものとすること。

 問題は立証責任が使用者と被用者のどちらにあるかということだった。鴨田哲郎弁護士は次のように語る。
「この書き方になると、立証責任が労働者に押しつけられる恐れがあります。解雇には正当な事由が必要ということであれば、使用者の側が正当事由を証明しなければならない。これまでの労働裁判はそうでした。しかし、原則は解雇自由だということになれば、権利濫用を労働者の側が証明しなければならない。これでは裁判が難しくなります。たとえば会社の経営状態について、労働者が証明できますか。資料はすべて会社が握っているんですよ。立証責任について、審議会では公益委員が『これまでどおりだから心配いらない』と言っている。しかし、審議会でこんな発言があったから、国会でこんな答弁があったからなんてことに、裁判官は拘束されません。裁判官が拘束されるのは法律の条文だけです。」

 2003年5月、衆議院厚生労働委員会で労働基準法改正案の審議をしていたときに、改正案に反対していたのは民主、共産、社民、自由の野党4党だったが、異例なことに自民、公明の与党も反対にまわり、法案の解雇ルールは次のように修正されて、2003年6月27日に参院で法案が可決成立されることになった。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用としたものとして、無効とする」(労働基準法第18条の2)

 与党までが反対にまわり、修正を余儀なくされた解雇ルールとは、いったい何だったのか。労働政策審議会は総合規制改革会議の圧力のもとに審議が進められていた。総合規制改革会議は小泉首相の諮問機関で、議長はオリックスグループの宮内義彦氏。財界の意向を小泉首相のトップダウンで法案に反映させた結果だということがわかる。

 しかし、小泉内閣が誕生した1週間後の2001年5月3日、厚生労働省事務次官等との協議で、小泉首相は「終身雇用を前提としている制度を見直してほしい」と提起、さらに「2,3年の期限付きの雇用ができたり、社員の解雇をしやすくしたりできれば、企業はもっと人を雇うことができる」との考えを既に示していた。さらに、その前の3月には、八代尚宏・日本経済研究センター理事長が、小泉氏と竹中平蔵氏の勉強会に呼ばれ、解雇規制の緩和やその法制化など雇用改革の必要性を説く機会があったという。単に、小泉首相が財界の意向を反映させたというだけではなく、政権発足前から八代氏や竹中氏などによる、新自由主義の経済理論を信奉していて、新自由主義に基づく政治を進めようとしていた形跡がみられる。

 当時から現在に至るまで、小泉首相からはスローガンの連呼だけで、国民に対して、進めようとしていた小泉構造改革=新自由主義に関する丁寧な説明はない。国民だけではなく、自民党の代議士に対してもたいして説明がなかったであろうことは、解雇ルールが修正されたことからもわかる。説明責任を欠くだけでなく、ワンフレーズポリティクスによるメディアコントロールで争点をそらすやり方は国民をだまし、ファシズムにつながるものだけに、小泉首相の政治の進め方は悪質である。

 CPEを撤回したフランスの話に戻ると、フランスは労働法典で、「解雇理由に『真実かつ重大な理由』がない場合は違法となる」と定め、その結果として解雇手続きを重視しているように、元々フランスは日本よりも労働者保護に関して手厚かった。大阪市立大学大学院の西谷敏教授は次のように語っている。

「少なくとも、ドイツを含むEUの労働者と比較すれば、日本の労働者の立場は絶対に弱い。これは断言できます。ただ、経済のグローバル化の影響は厳しく、ドイツにおいても規制緩和論者の間から『解雇規制を緩和せよ』という声は絶えずあがっています。だからドイツの制度が現在のまま不変だと考えることは間違いでしょう。現にコール政権が1996年に解雇規制を緩和し、そのあと登場したシュレーダー政権が1999年にまた強化するという動きが見られます。ただ動いているのは、解雇制限法の適用事業所の範囲や、整理解雇の人選の基準といったことで、根幹の部分は動いていない。労働者を一人の人間ととらえ、人間の尊厳を重んじ、『不当に解雇されない権利を守る』という精神が揺らぐことはないと思います。そういった基準は、経済が厳しい時代であればこそ、社会の構成を保つために重要になってくる。日本もいま、EUに学び、しっかりした一線をつくるべきでしょう。」

参考文献
『ルポ 解雇』島本慈子(岩波新書 2003年)

参考URL
デモ圧力 改革頓挫 仏が若者雇用策撤廃 学生・労組側は勝利宣言(ヤフー・西日本新聞)
仏デモが政府動かすワケ 街頭訴え共鳴社会(東京新聞)

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