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September 17, 2005

改憲への大きな一歩―2005年総選挙を振り返る

1 投票率上昇分が自民党に流れた?

 9月11日に行われた総選挙の投票率は67.51%(小選挙区)と、前回の59.86%より大幅に上昇し、1994年総選挙の水準まで回復した。

無党派層は小選挙区でどこに投票したか(出口調査)(読売新聞9月12日朝刊)
2003年衆院選 自民党28% 民主党51%
今回        自民党38% 民主党45%

 投票率上昇分の多くは自民党票だったと推測される。その理由としては、民主党が得票を減らしていないこと(後述)や、無党派層で自民党に投票した人が増えていること位しか挙げられないのだが、政治に関心がある無党派層ではなく、関心がない無関心層が今回投票に行って、その無関心層の多くが自民党に投票したとすると、投票率上昇と自民党得票増の説明がつくのだが、無党派層と無関心層に分けた調査結果がないと何ともいえない。

「無関心層」自民を選択? (朝日新聞神奈川版)

2 非民主的な小選挙区制

小選挙区の絶対得票率と議席率(前回総選挙との比較)
自民党
絶対得票率       議席率
25.52%        56.0%
↓(+6.06ポイント)→↓(+17.0ポイント)
31.58%        73.0%

民主党
絶対得票率       議席率
21.34%        35.0%
↓(+2.75ポイント)→↓(-17.7ポイント)
24.09%        17.3%

比例代表の絶対得票率と議席率(前回総選挙との比較)
自民党
絶対得票率       議席率
20.19%        38.3%
↓(+4.95ポイント)→↓(+4.4ポイント)
25.14%        42.7%

民主党
絶対得票率       議席率
21.60%        40.0%
↓(-1.17ポイント)→↓(-6.2ポイント)
20.43%        33.8%

 民主党は比例代表で前回よりわずかに1ポイント減らしただけで、小選挙区ではかえって得票を増やしていることがわかる。自民党と民主党の明暗を分けたのは、小選挙区の得票の差だった。この差が投票率上昇分ではないかと思う。

 得票率7ポイントの差を、議席率56ポイントの差にしたのが、小選挙区制のマジックである。勝者皆取り方式で、第1党に実際に得票した以上の議席を与えるのが小選挙区制の特徴で、安定政権をつくりだすのが目的だが、民意が正確に反映されない制度であり、少数意見が反映されなくなるという点で、非民主的であり、欠陥がある制度だ。単純小選挙区制を使用している国はアメリカとイギリスだけであり(フランスは小選挙区2回投票制)、日本と同じ並立制を使用しているのはロシア、イタリア、韓国といった国々で、他のヨーロッパ諸国では比例代表中心の選挙制度である。

3 3分の2の議席確保と憲法改正

 日本では憲法改正という重大な政治テーマがあり、小選挙区制は憲法改正のために導入されたという批判もあった。今回、自民・公明で3分の2の議席を確保したことで、その批判が現実化した。

 憲法改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要だが、戦後、自民党が3分の2の議席をとることはなかった。社会党は万年野党であったが、野党全体で憲法改正阻止の3分の1以上の議席を常にとっていて、そのことが社会党の数少ない大きな実績であった。

 その一例として、1953年、吉田内閣による総選挙が挙げられる。現在、「青年よ、銃をとるな。婦人よ、夫や子どもを戦場に送るな」と言って選挙を闘っても、どこまで通用するだろうか。戦争の記憶が風化してしまうというのは恐ろしいことだ。国際政治の知識ばかり豊富な自民・民主両党の若手政治家をみるたびに、決定的に欠けているのは戦争に対する想像力だと思う。

『戦後政治史 新版』石川真澄(岩波新書)

この選挙の争点は「再軍備」であった。鳩山自由党は憲法9条を改定してはっきり軍隊をもつことを主張し、改進党も清瀬一郎など一部に改憲反対派がいたものの、大体は改憲・再軍備説であった。吉田自由党は憲法はそのままに、「戦力なき軍隊」などの表現でごまかしながら、なし崩しに再軍備を進めていると思われていた。
これに対して、左右両社会党は、保安隊を解散する(左)か縮小する(右)かなどの違いはあったものの、ともに再軍備反対の立場をとった。選挙の結果は、国民の気持ちがこうした再軍備反対の側にやや傾いたことを示していた。とくに左社の躍進は、総評が「左社と一体」の方針で全面支援したことも大きな理由であったが、一般にはこの選挙で鈴木茂三郎委員長が叫んだスローガン「青年よ、銃をとるな。婦人よ、夫や子どもを戦場に送るな」が、敗戦の苦しみからまだ7年あまりの時期の国民の心をつかんだとされた。(p65-66)
 自民党が憲法改正を実現するために小選挙区制を導入しようとした例として、鳩山内閣のハトマンダー事件がある。
この案は衆院議員定数を497へ、当時の定数に30をプラスし、選挙区は定数1の小選挙区455と、21の2人区とを設けた。ほぼ単純小選挙区制と呼べるものであった。また、労組の選挙運動を禁止したり、立会演説会を廃止することも法案に盛り込まれた。
さらに、選挙区の区割りは、全体に自民党の現職に有利なように、また、なかでも旧民主党系に都合良く線引きされていた。この区割りは「ゲリマンダー」をもじって「ハトマンダー」と呼ばれた。ゲリマンダーとは、1812年、米マサチューセッツ州知事ゲリーが自分の属する党に有利なようにつくった州内選挙区の形が、ギリシャ伝説の火中の蛇「サラマンダー」に似ていたことを風刺して名付けられた選挙区の形のことである。
これは改憲の意図に反発する野党はもちろん、小選挙区制には賛成の与党からもきわめて強い反対があった。結局、小選挙区法案は世論の猛攻を浴びて、56年6月3日、廃案となった。(p77)

自民の「圧勝度」戦後2位 議席占有率61.7%(朝日新聞)

4 メディア選挙に踊らされた無関心層

またメディアに圧力:自民党「刺客と呼ぶな」/資料:郵政民営化世論(kitanoのアレ)

 広告代理店によるB層戦略(IQが低い小泉内閣支持基盤に対する宣伝戦略)が明らかにならなくても、連日のワイドショーの刺客報道など、自民党の狙いは明らかで、メディア選挙は大当たりだった。メディア選挙に踊らされたのは、広告代理店の思惑通り、テレビを見る時間の多いB層であるだろうし、それは今まで政治に関心が無くて選挙に行かなかった無関心層にも重なりそうだ。この人たちは、強いリーダーシップや、政策のわかりやすさ(郵政民営化に賛成)だけで自民党に投票しただけで、あまり深くは考えない人たちだろう。
 次の記事は若者だけをバカにしているようで関心しない記事だが、登場する若者の話はB層の典型だろう。

小泉自民寄りくっきり 20代のココロ(東京新聞)

5 市場原理主義志向の無党派層

 無関心層とは違い、無党派層はメディア選挙に踊らされただけではないと思う。郵政民営化をはじめとする小泉構造改革に賛成し、小さな政府と市場原理主義を志向する人々だろう。社会の一線で働いていて、政治に関心はあるが、普通に新聞を読む程度で、政治に対してあまり深く考えたことがない(考える時間もない)人たちだろう。

 民主党が、市場万能の市場原理主義(新自由主義)に対抗して、社会民主主義の政策を魅力的に提示できれば、この層の人たちはそちらに流れるだろう。民主党が、基本的に市場原理主義とあまり変わらない政党(そうではない議員もいるが少数派)であることが、無党派層を市場原理主義志向にさせ、民主党よりも徹底した市場原理主義の自民党に投票させたといえるかもしれない。

小泉構造改革=新自由主義とは何か(バックナンバー)

6 弱者は醜いという深層心理

 近年、日本では不平等の拡大を当たり前とするような「公正」概念に変化していて、今回の総選挙の結果もそれを表したものといえる。イギリスのロナルド・ドーアは、社会規範の変化の要因について、『働くということ』で考察している。

『働くということ』(1)(バックナンバー)

 内田教授は、今回の総選挙で「弱者は醜い」という「勝者の美意識」に大都市圏の「弱者」たちが魅了されたと分析する。

勝者の非情・弱者の瀰漫(内田樹の研究室)

 小泉首相や石原知事が人気があるのは、強いリーダーが待望されているからだとよくいわれるが、強いものを求める日本国民はまるで「自由からの逃走」であり、ナチス登場時のドイツによく似ている。
 フロムは強い者に卑屈に服従し(マゾヒズム的傾向)、弱い者に過剰に攻撃的になる(サディズム的傾向)からなる「権威主義的性格」こそがファシズム発生の人間的な要因であると主張した。

『自由からの逃走』E.H.フロム(東京創元社)(amazon)

社会的性格(はてなダイアリー)

7 最悪のシナリオ

 9月17日、民主党代表に前原氏が就任した。前原氏はタカ派なので、自民党と憲法改正で一致すれば、今すぐにでも憲法改正国民投票を行うことができる。国民投票の際は、今回の総選挙のようにメディア選挙に持ち込めば、容易に過半数の賛成が得られるだろう。さらに、憲法改正国民投票法案では、国民投票期間中は、至る所で憲法について論ずることを禁止し、違反者に刑罰を課するための方策が盛り込まれているようだ。

今朝の空は薄茶色(★J憲法&少年A★)

 前原民主党が憲法改正を断った場合でも、次の参院選で自民・公明で3分の2の議席を確保できればよい。次の参院選までに小泉首相から安倍首相に代わっているだろうから、人気のある安倍首相のもとで参院選を闘えば、3分の2も可能だろう。

 私は憲法改正に反対である。私は自衛隊の存在を認めているし、PKOのような軍事的国際貢献も可だと思っているが、9条改正に対しては、その裏には米軍の手足となって対テロ永久戦争に荷担し、それによる軍事大国化、さらには軍国主義化の思惑が隠れているとみている。自衛隊の存在を明文化するためだけに憲法改正することなどありえないと考えるべきだ。

 衆院で与党の議席が3分の2を突破し、野党第1党が右傾化して、世の中が一気に茶色化(ファッショ化)してしまった以上、私も微力ではあるが、当ブログで憲法改正阻止の運動をせざるを得ないと考えている。

茶色の朝(amazon)

8 民主党は新自由主義に対抗する思想を提示せよ

 5でも触れたことだが、民主党は新自由主義に対抗しうる社会民主主義を掲げて、魅力ある政策を提示していくべきだが、前原代表が就任したことで、このことは絶望的になってしまった。それどころか、それとは正反対に、新自由主義をより純化させた政策を提示してくる可能性が高くなってしまった。民主党も一枚岩ではないとはいえ、新自由主義派が多数を占めているので、今の状況でガラガラポンとなっても、自民党や前原氏など新自由主義派を利するだけだろう。

 残念ながら、見通しは暗い状況だが、ここは良識ある民主党の一部の議員や他の野党議員に希望を託して、後はわれわれ国民が国会を監視していくしかない。

本文中に紹介した以外の参考BLOG
05年9月:民主党再建の方向性(YamaguchiJiro.com)
総選挙後(ね式(世界の読み方)ブログ)
いよいよ次は憲法改正?(Mangiare!Cantare!Pensare!)
【9.11選挙】魔女狩りの政治学と漠然とした不安(シバレイのblog 新イラク取材日記)
小泉劇場で『政府の民営化』が実現した先にあるものとは?(toxandriaの日記)
小泉自民党の圧勝:これは単なる偶然の一致だろうか?(私的スクラップ帳)
だまされる国民たち(NOPOBLOG)
うかうか病気にもなっちゃいられないっすよ(怒)(続・愛のまぜご飯)
(49:51)+(51:49)=327:153 ……民意は何か(blog::TIAO)


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Comments

 本文への追記です。
 1で投票率上昇分が自民党に流れたのではないかと推測しましたが、それを裏付けることを東大の蒲島教授が話しています(『世界』2005年11月号「「郵政選挙」の結果を読み解く」)。データが載っていないので詳細は不明ですが、新しく参入した無党派層を、無党派層とは違う無関心層と定義できそうです。

(以下、引用)
 2001年の参院選で民主党が大敗したのは、都市の無党派層を取れなかったからです。実はその無党派層の部分に今回はもう一つ、7.65%という投票率の増加があったわけです。その多くが自民党の方に行った。実際は、民主党の基礎票はそんなに減っていないんです。水面がちょっと上がると岩が海に隠れてしまうように、小選挙区ではちょっとした得票率の変化で議席率ががらっと変わります。一斉に水が増えたことによって民主党という岩が全部隠れてしまったというのが、今回の状況じゃないですか。だからぼくは、有権者そのものが変わったというよりも、無党派層の割合が新しく参入した人によって多くなり、しかもその多くを小泉自民党が取ったことが、今回の自民党の勝因だと思います。(p97)

自分達の切実な問題だというのに、時代遅れの右翼かぶれの書き込みが踊っている2ちゃんねら達は危険ですね。

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