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July 24, 2004

『金で買えるアメリカ民主主義』を読む(1)

 「華氏911」のマイケル・ムーアも推薦するアメリカ人ジャーナリスト、グレッグ・パラストの『金で買えるアメリカ民主主義(The Best Democracy Money Can Buy)』
 この本では、ブッシュ氏が当選した大統領選のとき、フロリダ州であった不正操作のことが詳しく書かれているのだが、これは周知の事実なので、このことよりも経済のグローバリゼーションの話が興味深かった。題名とは裏腹に、経済の話が出てきて、翻訳ということもありわかりにくい比喩も多く、私には少し難しく感じた。
 何回かに分けて、この本を紹介する。今回は、7月のル・モンド・ディプロマティークでも記事があった、電力自由化を取り上げる。

「自由競争」に突き進むヨーロッパ電力産業(ル・モンド・ディプロマティーク)

 しかし、欧州委員会はコストが下がることを約束した。自由化されれば「EDFの料金はさらに下がるだろう」と、かつてル・ポワン誌のスタッフライターを務め、現在はモンテーニュ研究所の幹部となっているフィリップ・マニエールは予測していた。だが、EDFは公的独占下で、ヨーロッパ最低料金の実現に成功しているのだ。フランス政府高官フランソワ・スルトが指摘するように、「電力部門の改革にあたって競争開放という考えが勝利を収めたのは、他の解決策に比べて自ずから優れていたからというわけではなく」、第一次石油ショック以来の「イデオロギー状況がそうした風向きになっていたから」にすぎない
 まず最初に結論から言ってしまうと、こういうことになる。資本主義のなかでも、徹底した規制緩和をした新自由主義(新保守主義)こそ優れているとよく言われているが、優れているのではなくて流行っているということだろう。イギリスのサッチャー首相、アメリカのレーガン大統領が始めた新自由主義は今日までトレンドになっているが、経済的に優れていたからトレンドになったというよりも、政治的に優位にあったので、経済的なトレンドになったというのが実情ではないだろうか。
 最も有名な事例は、言うまでもなく2000年と2001年のカリフォルニアだ。ここの発電会社は談合により、電力不足を演出し、価格高騰を誘発した。多数の発電所を補修中としたり、高圧送電ネットワークに過大な負荷をかけたりした。あるいは近隣の州へ販売し、そこにあるグループ企業からカリフォルニアの顧客への転売をアレンジした。この間に電気の価格は暴騰した。カリフォルニア州政府は卸売市場価格を直接設定することで、ようやく価格の高騰と停電の頻発を終わらせ、次いで配電会社の破産を防ぐための資金を借り入れた。しかしエンロンのような仲介業者は、救済制度の恩恵を受けることなく崩壊した。「カリフォルニアの危機の本質は、次の問いに集約される。白昼堂々と300億ドルを強奪するなどということが、いかにして可能となったのか、だ」と、経済学者ポール・クルーグマンは記す 。彼によれば、電力部門はあまりに操作が容易であり、自由化すべきものではない。
 エンロンによるカリフォルニア州の電力自由化は、グレッグ・パラストの『金で買えるアメリカ民主主義』第3章でも詳しく書かれている。
 電力産業などは費用逓減産業と呼ばれ、経済学では伝統的に政府による規制が必要とされてきた。この常識を覆したのが、イギリスのスティーブン・リトルチャイルド博士(元イギリス電気事業規制局長)だった。彼の電力の自由市場構想は、サッチャー政権のウェイカム・エネルギー相によって、世界初の「電力卸売り」発電所認可を手始めに実行に移される。発電所の所有者は1985年に設立されたばかりのエンロン社だった。
 キロワット単位で電力を売買する取引所ができると、理論上は電力の価格が下がるはずだったが、談合や価格つり上げが横行し、電力の価格が何倍にも上がった。
 リトルチャイルド博士の構想がうさんくさいことは、1990年代に入り、ウェイカムがエンロン社の役員に、1998年以降、リトルチャイルド博士がエンロン社の子会社の役員になったことでもわかる。グレッグ・パラストも言うように、電気は「朝食用マフィンとちがって、値上がりがひどいから食べるのを止めておこうという、というわけにはいかない」のである。

 アメリカでは、1933年にルーズベルト大統領によって、公益企業持株会社法、連邦電力法、連邦通信法が成立し、電力事業は長い間政府の規制下にあった。ところが、1992年にブッシュ大統領が電力規制緩和に動き出し、エンロン社によるカリフォルニア州の電力自由化につながっていく。2000年、カリフォルニア州の大停電がおき、2001年、エンロン社が破産する。

 さすがに日本ではほとんど話が出ていないが、水道の自由化も既に実行に移されている。これもイギリスから始まり、IMFが発展途上国に水道の自由化を強制して、悲惨な結果に終わった例も多い。

『金で買えるアメリカ民主主義』p200


電力の「自由化」も大儲けが見込めるが、水道はもっと確実だ。政府がすでに水道管の費用を払っているし、市場は囲い込まれ、契約者は水が足りずに干上がっている。最初に水道自由化に踏み切ったのは、またまたサッチャー政権のイギリスだった。イギリスの水道料金はアメリカの料金の2.5倍に跳ね上がり、水道会社の株価は5倍になった。そして、1995年、水道システムはめちゃめちゃになってしまった。イギリスの一部の地域では、芝生に水をやっただけで逮捕された。大勝利をおさめたのは(巨額の政治献金もおさめたが)、ウェセックス・ウォーター社、エンロン社の100パーセント子会社である。
(続く)

参考
はじめてのミクロ経済学 6 市場の失敗(関西大・橋本教授)
規制緩和に関する常識・非常識(慶応大で行われた寄付講座「規制緩和と産業の対応」)
エンロンが仕掛けた「自由化」という名の金権政治(田中宇の国際ニュース解説)

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